江戸川乱歩「黒蜥蜴」
高校生か中学生の頃ぶりに再読した
やっっぱ江戸川乱歩、最高である 神 ゴッド ゴッデス イエイ
女盗賊
いやいやいや……、女盗賊、最高でしょ
「黒蜥蜴」の完成されすぎたキャラクター性にはもう江戸川大先生に感謝してもしきれない
カリスマ・変装のマエストロ(対象は男女問わない)・トリッキーな喋り口調・一人称は僕だか私だかわからない
70年80年たっても魅力的が過ぎる
明智小五郎もにくい
大大大名探偵、明智小五郎氏
物語は黒蜥蜴とその右腕がどでかい計画に手をつけるところからはじまるので、我らはまだかまだかと名探偵を待つわけである
10代のころ黒蜥蜴を読んだときは(もしかしたら他の明智シリーズだったかもしれない)、地の文で「読者のみなさんはお分かりだろうが云々」と呼びかけられた時に「明智が語りかけてきた」と勘違いしていたことを思い出した ガロア少女、なんともアホ
明智と黒蜥蜴の応酬
黒蜥蜴は大商人の娘を誘拐するが為に明智に挑戦状を叩きつけたのだが、序盤1回目の拉致計画は失敗する
失敗というか、明智も女盗賊を捕まえ損ねたので痛み分けであった
ゆえに互いの矜恃に火がつき騙し騙されのやり取りをするわけだが、子供向けありきのインパクトのみに注視したそれではない 大人が読んでもワクワクする
「いやいや、そんなことできるわけねえだろ」とか思っちゃ野暮である ヤボヤボの実であるよ
ロマンスもバッチシ
アンダーグラウンドな世界に手を染める女盗賊と、正義を遂行し悪をとっちめる男名探偵
レベルの高い騙し合いにお互い火がついたのは、対抗心だけではなかったのである
(言い方が3流レビュー)
とうとう明智を殺してしまった黒蜥蜴は、突然の喪失感にぼろぼろと涙を流す そしてとうとう手中に収められてしまった人質、早苗嬢は自分を救うヒーローがいなくなってしまったと、絶望感に涙する
二人の女が、明智によって引き起こされた全く違う感情においおいメソメソする わたしはラストシーンよかこっちの方が心にきた
まあ明智があれで死ぬタマではないのだが
娯楽小説極まれり
江戸川乱歩は「人間椅子」然り「踊る一寸法師」然り、どっかアングラで倫理道徳を追いやった作品のイメージが強いかもしれない
でも一見して少年探偵団シリーズや明智小五郎シリーズなんかの事件があれよあれよと解決し人情溢れる展開も挟みつつの痛快物語!な作品も中々面白い(短編でいうと「灰神楽」なんかがそのノリに近いかもしれない)
関係ないけど江戸川乱歩初心者には少年探偵団シリーズは個人的にちょっと勧めにくい
地の文が講談のようなノリなので、落語やなんかに明るくないと読みづらい可能性がある
そういう人には「明智小五郎」シリーズを勧めようかな、と思っている 別に勧める予定ないけど